『密やかな結晶』 小川洋子

密やかな結晶 (講談社文庫)

密やかな結晶 (講談社文庫)


一日に同じ作家の本を2冊も読んでしまいました 笑
なんとなく本屋で気になって購入したんですけど、かなりよかったです。
そこそこ厚みのある本ですが、一気に読んでしまいました。
これから小川洋子さんにはまりそうな予感w


ところで、私の好きな作家NO.1は東野圭吾さんです。
緻密な構成の文章とか、最後の思いがけないどんでん返しとか、
読んでは感嘆するような本が好きなんだと思います。


しかし、この本は全然そんな感じではありません。
"静寂"という言葉がふさわしい感じ。
終焉に向かって、ひっそりと物語が進んでいきます。
なのに、話の続きが気になって、結局一気に読んでしまいました。


この物語の設定はなにか不思議です。
舞台は島。
そこでは静かに記憶の消滅が進んでいきます。
不思議なことに、ある日目覚めると、何かが「消滅」するんです。
前日まではかけがえのないものだったはずの何かが、
目覚めたその瞬間から、それの持つ意味もそれに関する記憶もあやふやになってしまう。
そして、人はその「何か」をなくしたことすら忘れてしまう。
そして、何かをなくしていくうちに、自分自身すら空虚な感じが漂うようになって…。


といった感じのあらすじです。
以下は本編の内容に関わる戯言ですので、気になる人だけどうぞ。





島の中には記憶がなくならない人たちもいるんですが、
その人たちはその存在が知られると、秘密警察に連行されてしまいます。
でも、なぜ秘密警察は彼らを連行したんでしょう?
危険分子だから?
でも、記憶をなくす人となくさない人の間には埋められない溝があって、
どんなに抗っても記憶がなくなる現象は止められないのに。
それとも、記憶の消滅を食い止める研究の材料にするため?
彼らも本当は記憶を無くしたくなかったのでしょうか?
「消滅」したものの存在を徹底的に抹消しようとしたのは、
自分の中の何かが消滅した事実に抗うことによる反動だった?
う〜ん、よくわからない。