『手紙』 東野圭吾

手紙

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東野圭吾2連続です。
今回の物語は、強盗殺人犯の弟というレッテルを貼られることになった青年の苦悩を描いたもの。
早くに両親をなくし、二人で生きてきた剛志と直貴。
高校卒業を控えた直貴に、ある日、兄が強盗殺人を犯したという連絡が来ます。
兄が強盗をしようとしたのは弟の大学進学のための資金を手に入れるため。
しかし、この事件のせいで弟は大学進学を諦めざるを得ない状況に陥ります。
それだけではありません。
何をしようにも、「殺人犯の弟」というレッテルがつきまとうので、
いつもそのレッテルのせいで大切なものを諦めざるを得なくなります。
そして、苦悩する弟の選んだ結論とは…。


さて、この話で印象的なのは「差別」のとらえ方です。
作中のある人物は、苦悩する主人公にこういいます。

差別はね、当然なんだよ。大抵の人間は、犯罪からは遠いところに身をおいておきたいものだ。
犯罪者やそれに近い人間を排除するというのは、しごくまっとうな行為なんだ。
我々は君の事を差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる――すべての犯罪者にそう思い知らせるためにもね。


衝撃的な意見でした。
一理あるとは思います。
しかし、納得はできません。
犯人の弟であるということで直貴の受けた苦しみは、そんな言葉で解消されるものではないからです。


なかなかいろいろと考えさせられる小説でした。